心(メンタル)を強くするとは

メンタルトレーニングの基礎となる考え方であり、スポーツ指導者だけでなく経営者などのビジネスマン、または子どもを育てる親にも共通する考え方であると思います。

人間の脳の進化

私たち人間の脳の構造というのは、大きく三つの層に分かれています。

まず、一番奥に「旧皮質(爬虫類脳)」があります。ここは、本能の脳です。生命を存続させるための食欲や性欲のエネルギーを湧かさせる脳です。この欲求は、無意識で湧き上がるようになっていてワニなどの爬虫類の脳です。

心のエネルギー創生論
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この旧皮質を取り囲むように「大脳辺縁系(動物脳)」があります。ここは主に「感情(喜怒哀楽)」を司っています。犬や猫などの哺乳類の脳は、大脳辺縁系が形成されています。犬や猫は、この脳があるので嬉しさや悲しさなどの感情を表現します。

そして、人間には、そのさらにまわりを囲むように大脳新皮質(人類脳)があります。大脳新皮質が思考を司り、人間を万物の長として君臨させているのです。

この脳の構造を理解した上で、この三層の脳の働きから「心の強さ(大脳新皮質の強さ)」についてお話したいと思います。

なぜ心(メンタル)が崩れるのか

試合や練習場面で感情が崩れてプレーが上手くできない時があります。試合でビビッたり緊張したり、また、強いストレスやプレッシャーを感じた時は、食欲が止まらず食べ過ぎて太ってしまったりします。これらのメンタルの崩れは、この脳の構造によるものなのです。

三層の脳の生命エネルギーの強さは、「大脳新皮質(人間脳=思考の脳)」よりも「旧皮質(爬虫類脳=本能の脳)」や「辺縁系(動物脳=感情)」のエネルギーの方が断然強いのです。

心が強い、精神力がある人は、大脳新皮質が発達成長して他の脳のエネルギーに負けない強さを持っています。言い換えれば、大脳新皮質(人間脳)で感情や本能のエネルギーをコントロールする力を持っているということです。

世の中では、アルコール依存症、過食症、薬物中毒、また、感情(煩悩)に支配されて自己コントロールができない人がいますが、これは、大脳新皮質が発達成長できなかったために「感情の脳」や「本能の脳」の力に負けたため起きた問題なのです。

人間は、心が育つにつれて新皮質のエネルギーがどんどん強くなります。真の大人に成長すれば、本能や感情に支配されずに生活することができます。

心を強くする

心を育成するとは、人間として正しく生きるための知識や知恵・コツなどを学び習得することを言います。大脳生理学的に表現すれば、新皮質にある一四〇億の脳神経細胞が学習により、シナプスの繋がりが増え神経細胞ネットワークが巨大化すること。これが「心を強くする」ということです。

選手たちの心を強くしたければ、スポーツを通じて人間の正しい生き方や考え方を教え、新皮質が賢くなるように指導してあげることが大事です。

感情で指導したり、過激なストレスやプレッシャーをかけたりする指導では、心は育ちません。心が育たなければ、大脳辺縁系(感情脳)や旧皮質(本能脳)のエネルギーに負ける選手になってしまいます。

心を強くする思考法

・意志の強さ

自分がやろうと思ったことができない、続かない。何とか自分の意志の弱さを克服して強くなりたいと思っている選手や意志を強くさせたいという指導者は多いようです。

ところが、やろうと思ってもやる気が出ない、つい他のことをしてしまう、ちょっとうまくいかないことやイヤなことがあると我慢できずにすぐに逃げてしまうなど。このような場合は、自分のやる気のなさや意志の弱さのせいにしてはいけません。

前記した脳の構造から言えば、考え方の問題です。では、どのように考えればよいのでしょう。

「意志の弱さ」ではなく「やりたいという思いの弱さ」と考えます。やりたい思いが本当に強ければ、自ずとやる気も出ます。そして、簡単には諦めません。

「やりたい思い」は、そのことで自分に得られるものの魅力をどのくらい知っているかです。その魅力をうまく新皮質でイマジネーションすることで、やりたい思いを強くする工夫もできます。

また、「○○のため」と考えることでやりたい思いが強くなることもあります。例えば、自分のため、家族のため、チームメイトのため、もしくは、応援してくれる多くの人の役に立つためなどです。また、自分はこういう生き方をしたいというのが明確になれば、そのためにもっとスポーツに熱中したいと思いようになることもあります。

「意志を強くする」のではなく「希望(やりたいこと)」をはっきりさせて「意志の強さ」ではなく「回数」で勝負します。つまり、「意志の強さ」ではなく「希望の回数」です。後は、希望を思考することを努力して継続し習慣化することです。習慣になれば自然にできます。

努力を続けるためには、それを宣言することを愉しむことです。

楽しむと愉しむの違い

「楽しむ」とは 与えられたこと(物理的に)に対して楽しく過ごすこと。

「愉しむ」とは 自分自身の気持ち、思いから感じ生まれる楽しい状態、自分の気持ち、考え方一つでどうにでも変わる。

自主性と主体性の違いを知る

・自主性

自主性とは、他人からの干渉や保護を受けず、独立してことを行うこと。もう少し噛み砕いて説明すると、自主性は単純に「やるべきこと」は明確になっていて、その行動を人に言われる前に率先して自らやることです。よく指導者に練習をしていて「もっと自主的に動け」と言われたりします。

自主性を言い換えると「同じやるなら、やれと言われてからやるのでなく、自分でやろうと思ってやれ」という意味です。

・主体性

主体性とは、いろいろな状況下においても自分の意志や判断で行動すること。「主体性」は、何をやるかは決まっていない状況でも自分で考えて判断し行動するということです。主体的な人とは「目的は何かを徹底して明確にして、それを満足させるために何をどうのようにするかを自分で考えて、後のリスクを承知で行動することができる人のことを言います。

主体的な人は、準備などの自主的行動をする前にその目的を考えます。そして、その目的が「チームを良くすること」であると定義したら、準備の自主行動以外にもっと合理的に準備するために部員で話し合いしようと提案して実行することができます。

「主体性をもって行動する」ということは、自分で状況を判断して、自らの責任で最も効果的な行動をとるということです。

「自主性」と「主体性」の違い

「主体性」は、やるべきことをやるだけにとどまらず、場合によっては、今までやってきたことが効果的では無いからやめると判断することも出来ます。

「自主性」は、やるべき事をいかに人に言われる前にやるかということなので、自分で物事を考える習慣はつきません。反射的に行動することが多いのです。

この二つの大きな違いは、自分の新皮質(心)で物事を考えるか、考えないかにあります。「自主性」は自分の頭で考えないが「主体性」は自分の頭で考えなければならない。また「主体性」は、とった行動の結果について、自分が責任を負うという要素が含まれます。

強い選手を生み出すチームは、「主体性」を育てる工夫をしています。しかし、多くのチームは「自主性」を育てることに主眼があります。

主体性を育てることができれば、新皮質は大きな力を持つようになり心の強化(精神力=メンタル)も自然にできるようになります。

(ヒューマンプロデューサー 長谷川一彌 著 「心を強くするとは」より)