カルシウムの話 その2「カルシウムは体内でいかに働くか」

前回、私達地上の脊椎動物が、海を離れるに際して、一種の生命維持装置を体内に備えたと記しました。今回は、いかにして陸上生活のための生命維持装置は作り出されたのか、遠い過去を訪ねてその謎を解き明かしたと思います。

かつて生命が誕生した海は、現在のようなナトリウムやカルシウムの豊富な海ではなく、むしろ、カリウムやマグネシウムの多い海だったと考えられています。こうした海で生命は、まず誕生しました。ここで生命は、最初の生命現象であるカリウムやマグネシウムによる酵素反応を生かしたまま次のステージを受け入れようとしました。それはこういう方法によって成りました。最初の生命活動をカリウムやマグネシウムに依存していた細胞に細胞膜をかぶせ、太古の海に近い環境を細胞膜の中に保存したのです。そうして、新しい海であるナトリウムやカルシウムの多い海の中で暮らせるようにしたのです。

体内で細胞膜の外を流れる「血液」は、ナトリウムやカルシウムの多い新しい海の性質を備えています。やがて生物は、ナトリウムやカルシウムをたっぷり含む海のない「大気という環境」の中へ出ていくにあたって、ことにカルシウムをたっぷりと含む骨を用意したのです。このように、新しい海を血液というかたちにして細胞をこれに浮かせ、この海にカルシウムを補給し続ける生命維持装置として骨を擁し、我らの祖先は、やがて揚陸を果たすこととなります。私たちの身体は、血液を表皮で閉じこめたひとつの海を抱えているのだともいえるでしょう。そして骨がその海を、また引力から身体を、支えているのです。

脊椎動物は、体内にカルシウムを保存するにあたってリン酸カルシウムという化合物で骨をかたちづくりました。しかし、生物の世界では、カルシウムをリンとの化合物で保存するスタイルは特殊なものなのです。たとえば、同じカルシウムを主体とする貝類の殻は、炭酸カルシウムででき上がっています。ではなぜ我ら地上の動物は、その骨をリン酸カルシウムで作り上げたのでしょうか。それは、リン酸カルシウムならいったん堅牢な骨の組織を作り上げても、ふたたび血液中に溶かすことが可能だからです。貝類のような炭酸カルシウムでは、この再利用を行うことができません。揚陸に際しての生命維持装置は、まさに絶妙な選択をしたのです。リン酸カルシウムは、コラーゲンと呼ばれる繊維を構造の核としてここに蓄積される。これが骨の基本のかたちです。いわばここには濃密なかたちでカルシウムが保存されています。さらに、新しい海として体内の生命維持に欠かすことのできない血液にもカルシウムは保存されています。ただし、その濃度は、先にも記したように、海が持つカルシウム含有量の4~5分の1です。そして骨のカルシウム密度から見るとその量はなんと1万分の1でしかありません。さらにいえば、太古の海の様相を残す細胞内に含まれるカルシウムは、血液のまた1万分の1。骨の密度に比べると1億分の1の密度です。しかしこの濃度の落差が、実は陸上の脊椎動物のさまざまな生命活動をつかさどる上で大事なのです。これが今月のカルシウムのお話しのポイントとなります。

そもそもカルシウムは、体内どのような働きをしているのでしょうか。細胞膜の中にはカルシウム・チャンネルと呼ばれる大きな構造をもった一種のタンパク質があります。下に示した模式図をご覧ください。

これはいわば細胞の外と内を隔てて、カルシウムの出入りを見張る関所のようなものです。上に示したのが細胞膜の模式図。この細胞膜の関所をカルシウムが通過できる条件は厳しいものとなっています。その条件とは、細胞の電位差が変わる時(図1)や、細胞膜にある受容体と呼ばれるタンパク質に外から特殊なホルモンの指令を受けてリガンドと呼ばれる分子が受容体に働きかける時(図2)だけなのです。前者の「電位差に依存してカルシウムを細胞内に入れる働き」が電位差依存症であり、後者の「受容体に働きかけて細胞内にカルシウムを入れる働き」が受容体依存症と言います。ではなぜ、このようなカルシウム・チャンネルと呼ばれるような関所があるのでしょうか。それは、カルシウム濃度が1万倍も異なる細胞の内と外を管理するためです。細胞の外を流れる血液にカルシウムが1万個ある時、細胞内の細胞液にはたった1個のカルシウムしかありません。細胞外のカルシウムの数から見れば細胞内はまるでカルシウムの真空状態のようですね。このきわめて落差の大きい環境をきちんと保つのがカルシウム・チャンネルの働きです。そして、カルシウムの真空状態に近い細胞内に、たった1個のカルシウムが運ばれてくることで、その細胞自身に大きな変化が及ぼされるのです。

細胞内にカルシウムが運びこまれて起こる変化の代表的な例は、精子と卵子の結合の際に見られます。受胎の瞬間、精子は卵子の中にカルシウムを送り込みます。するとこのカルシウムの信号によって受精卵細胞が働き出し、分裂活動を始めるのです。カルシウムはまさに、生命誕生のトリガーなのです!またこういう働きもあります。手足や心臓の筋肉も実はカルシウムによって働かされています。筋肉繊維細胞の中にカルシウムが取り込まれると細胞は収縮し、逆にカルシウムを外に排出することでふたたび伸びる、ということが筋肉で起こります。筋肉内の極めて希薄なカルシウム環境に外からカルシウムが1個持ち込まれるだけでこうした収縮が起こるのです。1万倍という濃度の落差が、わずかなカルシウムによる筋肉細胞の活発な働きを微妙にコントロールしているのです。この他、カルシウムの出入りによって体内の細胞はさまざまな働きを行っています。カルシウムなしに、身体のさまざまな機能は働かないのです。カルシウムがなければ生きていけない理由がここにあるのです。

いかがだったでしょうか。つまり、カルシウムは全ての細胞の「スイッチ」と言っても良い働きをしてくれるのです。ですから、カルシウムが不足すると、細胞の働きが鈍くなり、それが組織の働きの鈍さを引き起こし、体調や健康度が落ちる原因を作っているのです。逆を言えば、カルシウムが十分あれば、人間はその能力を引き出す、または伸ばすことができるのです。田畑さんのカルシウムは、体内に摂り込んだらすぐに使えることができる、世界一の水溶性を誇ります。だから我々、能力開発の会社が採用しているのです。

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